ためしてドラクエテン

 ドラクエ10発売後3週間が経とうとする夏の終わり。発売日に買ってから普通に遊んでいる。昨日で初回20日無料券が切れたので思ったところをメモしておく。いろんなところに書いてある内容だと思うけど。

 オンライン化発表の時点で、MMOなんてドラクエじゃない、という印象を誰もが持ったであろう。悲喜交交の感想があるとはいえ、ドラクエ10はこの点をクリアしている。3Dなんてドラクエじゃないと言われた8、携帯機なんてドラクエじゃないと言われた9も、蓋を開けてみればドラクエそのものだった。この意味で、ドラクエ10も同様にドラクエである。ただし、そのドラクエ感は9までのシリーズと比較してかなり薄味になっている。キャラクタは鳥山だし音楽はすぎやんだしシナリオも堀井だ。この3つさえ揃っていればドラクエドラクエたるものになるが、もう一つ重要な要素がドラクエ10には抜けている。

 その最大のダメポイントが経験値と金のデフレ化だ。MMOだから仕方ない、というのは置いておく。確かに毎月1000円の接続料(=ほとんどサーバー維持費)をペイするために、超長期間ユーザーに遊んでもらう仕組みを作らざるをえないのは分かりきったことである。従ってあらゆるMMOに共通して、通常のコンシューマRPGの何倍もの期間を持たせるために、敵を倒してもらえる金と経験値を水で薄めるわけだ。

 しかし、やっぱりこれがよくない。もうちょっというと、ドラクエ10における経験値の少なさはドラクエらしさを激減させる要素になってしまっている。本来ドラクエは勇者を成長させるゲームだ。最初は弱いスライムに四苦八苦しながら一歩一歩経験を積み、最終的に魔王を打倒するレベルまでに至る成長のゲームだ。こうした成長を進んで行わせるインセンティブドラクエ10には圧倒的に欠けている。

 今回のドラクエは、これまでの階段の1段分を更に細分化した100段分のミニ階段を延々と登らせている。もちろん敵を倒し続けてレベルを上げる、という作業自体はこれまでと変わりがない。しかしこれまでの階段登りには、必ず2つのショートカットの選択肢のどちらかがあった。1つはご存知メタル刈りである。FC版3以降の要素であるが、自分と同レベルの必ず倒せる敵を倒す代わりに、めったに倒せないメタスラ・はぐれメタルを狩ることで、通常の狩りを上回るボーナスを獲得することが出来る。このショートカットが最も一般に浸透したのは9のメタル地図だろう。もう一つの道は、自分よりはるかに強い敵を頑張って倒したときのボーナスである。FC版1、2がこれにあたる。最も有名なのはドラクエ3で船を手に入れた直後にアッサラーム南方の火山周辺でフロストギズモやトロルを狩るパターンであろう。適正レベルより10レベル以上も高い強敵を相手にするので4〜5回も戦うとMPや道具が尽きてしまう。その代わり、その頑張りにふさわしい経験値を獲得することができた。

 これらのショートカット成長はドラクエ10には存在しない。特定のメタル出現ポイントは無く、何倍も強い敵をやっとの思いで倒しても、得られる経験値は同レベルの敵の2倍にも満たない。結果、同じ強さの敵を延々と狩る作業が唯一の成長の道なのである。

 これまでのドラクエに何故これらのショートカットがあったのだろうかと考えよう。我々は3パターンの成長の道筋を与えられていた。第1の同レベルの敵を倒す着実・堅実な成長。第2のメタル刈りにかける一発逆転の成長。第3の強敵をわざわざ相手にするハイリスクハイリターン型の成長。基本的にこれらのどれが正解というものはなく、プレーヤーは自分の考える好きな道筋で、あるいはその時の気分によって、3パターンの成長を楽しむことができた。第1の道は安全である。しかしこの道は極めて「単調」なので、第2・第3の道を選ぶことになる。しばらくするとそのリスクやメタルを追う気力に限界が生じるため、時には第1に戻ったりする。こうして成長方法を回転させることで、経験値という一つの数値を増やす単純作業を持続的に行わせてきた。開発側から見れば、第1の道が「単調」であることを前提としていたからこそ、第2・第3のショートカット成長を用意していたのではないか。そしてドラクエ10は、この単調な第1の道を自覚的に強制させていると言える。地道にレベルを上げる単線的な成長方式は、実はドラクエっぽくない。

 ところで、強いボス敵を倒すという目的のためにレベルを上げる、という当たり前の流れはまた別の話になる。おそらく10では、強いボス敵を多く配置していることで、第1の単線的成長にインセンティブを持たせているつもりであろう。しかし僕は、現状の10におけるこれを否定したい。ラスボスに至るまでに、10あるチェックポイントのうち6つを通過しろと言われ6つを通過したのだが、この6つのポイントが(現状では)ストーリー的なつながりが全くといって言いほど無い。大体4つを放置してもラスボスに挑むことはできた。そしてこのつながりの無さは、強いボスを倒す動機そのものの低下に直結する。今後、もちろん6つとは言わず10すべてのポイントを繋げるストーリー展開を強く望むが、現状では、強い敵を倒す理由が殆ど無く、従って10におけるボス打倒という目的が単線的成長を促すには至っていない。これでは弱すぎる。

 今後はこうした単調さを払拭するべく、経験値の調整以外の方法がとられるだろう。一度薄めたカルピスを濃い目に淹れなおす経営上の理由がスクエニにはない。多分、「強敵を倒すとたまに何かアイテムor成長に関わる何かが得られる」という方向で調整が行われる気がする。しかしこれは上に書いた第3の道ではない。第3の道で獲得できるものは、リスクを追う代わりに確実に2段分の階段を登ったという実感=大量の経験値という数値である。10回に1度のハイリターンのために9回のハイリスクノーリターンを経過しなければならないのは、第1の単調な道とほとんど変わりが無い。僕がドラクエ10に足らないと思うのは、一歩ずつ登れる成長の階段と、たまのショートカット、そしてそれらを自由に選べる環境だ。階段を細分化するのではなく、通常の段差のままの階段をどんどん先に伸ばしていく方向(9みたいな数度の職業転生、転生後はレベル1になるけどステータスの底上げ可能、こちらの強さに連動して成長するシナリオボスなど・・・)でドラクエ10が展開してくれれば最高だった。


 メモというには長い。しかも愚痴。ここまで言ったがまあドラクエ10は楽しく遊べるドラクエではある。一応一人でもNPCを連れて冒険できるし、パーティプレイもホイミとか攻撃の位置取りのあれこれでキャッキャできる。9の通信プレイと同じイメージでしかもコミュニケーションを取りながら遊べる。これは楽しい。楽しいが、これがドラクエという名前じゃなかったらまず手を付けていないゲームなのは間違いない。気がつくと愚痴になるな。

 NPCを連れて行くのに比べて、パーティプレイならNPCより平均レベルが3〜4低くてもなんとかなる。これは道具を4人分持てることや臨機応変な行動が出来ること、裏を返せばNPCがどうしようもない行動しかしないことによる。難しいと思ったらパーティを募るべき。そして募るときは混んでるサーバーへ行くべき。絶対誰かいる。

 廃人というほど遊んでいないが、現在旅芸人レベル43、ラスボスにレベル50の戦士の人とかと一緒に挑み、途中で中座として出てきたベリアル・アークデーモンにボロ負けしたところまで。無料期間のうちにクリアすることは出来なかった。サブ要素ではカミハルムイのジパング的風景が大変気に入ったので木工職人に。バザーで素材を安く買ってスパイクロッドを作り普通に店で売ることを繰り返して金を稼げることに気づき、いつの間にかレベル30でカンスト。最近は素材が適正価格になったようでもうこのバイトは出来ない。

 ところでここ3週間のバザーの供給と価格の流れは経済学的に大変興味深い。最初何に使うかわからなかった素材は二束三文で投げ売りされていたが、全体的に進展するに連れて用途が判明し、需要が増加=価格が高騰していった。非難する意図は全く無いが、極限攻略の方々が素材の参考価格を示した影響は大きいと思う。大企業によるインフォーマルな価格指示の一例と言えるか。素材売りは、参考価格と同じ程度で気長に待つか、あるいは安値で売って回転数を稼ぐかしかない。利益は少ないが確実ではある。

 逆に素材で作る武具は発売後1週間で早くも供給過多になった。おそらく最初に作れるようになった職人が、投げ売りされている安い素材を使って大量に市場に流したため。僕もギリギリそれに乗れた。今から始める人は、装備を揃えるのに武器屋・防具屋を一切使う必要がない。そのかわり、バザーを利用したお金儲けは非常に難しい。今現在のトレンドは、バザーで安く武具を買い、ツボorランプ錬金で特殊効果をつけて転売する商売か。武具の必要数は最終的には頭打ちになるので、それ以降は自由に追加効果を付けられる錬金系のみが生き残ると予想できる。ここを見てこれから始める人は、最初は大変そうだけどツボorランプ錬金術師をおすすめする。というかなってほしい。